Ciscoは毎年、モバイルによるトラフィックの観測データと、今後の予測に関する「Cisco Visual Networking Index」を公開・アップデートしています。
2013年度分が2月にアップデートされていたことを、Aigle Catさんのブログで今日知りました。
日本語版もアップデートが行われていたので、スマートフォンとモバイルトラフィックに焦点を当てて見て行きたいと思います。
Cisco Visual Networking Index
モバイルデバイスとスマートフォン
2013年、モバイルデバイスは前年から5億台増えて、世界で70億台になりました。この成長を支えているのがスマートフォンで、増加した5億台のうち4億600万台がスマートフォンです。2013年、スマートフォンはモバイルデバイスのうち27%(約18億9000万台)を占めるようになりました。
もうひとつ、無視できない増加としてタブレットがあげられます。インターネットに接続されるタブレットは前年比で2.2倍の9200万台になりました。
その他のモバイルデバイスは以下のとおりです。
- ウェアラブルデバイス : 2200万台
- フィーチャーフォン : 51億1000万台
- モバイルインターネットに接続されたノートパソコン : 1億4900万台
モバイルトラフィック
70億台のモバイルデバイスが生み出したトラフィックは18エクサバイトで、2000年からほぼ18倍にまで膨れ上がっています。今年のトラフィック増加を促進させたのは4G(LTEやWiMax2)で、3Gや2Gと1台あたりの平均トラフィックを比較したところ、14.5倍という数値を叩き出しています。また、インターネットに接続する全モバイルのうち、4Gを利用しているのは2.9%ですが、トラフィックは全体の30%にまで達しました。
スマートフォンはモバイルデバイスのうち3割弱ですが、トラフィックの95%(17.1エクサバイト)を占めます。月に平均で529MBの通信を行っており、これは前年よりも50%増加しています。スマートフォンを上回る平均トラフィックを持つのがタブレットで、スマートフォンの2.6倍に匹敵する1374MBにのぼりました。
その他のモバイルデバイスの数値は、次のようになっています。
- ウェアラブルデバイス : 全体で月間1.7ペタバイト
- フィーチャーフォン : 平均で月に11MB
- モバイルインターネットに接続されたノートパソコン : 平均でスマートフォンの4.6倍で、月に2.45GB
特にモバイルトラフィックを増加させているのは、動画コンテンツです。2012年に全体の50%を超えて、2013年には53%になりました。2018年にかけてこのトラフィックは14倍にもなり、全体の69%になると見られています。動画は画像や文章に比べると容量が大きく、弱い回線では見るのに不自由しましたが、4Gを始めとして回線速度の高速化が行われたため、ストレス無く見られるようになり、トラフィックが増えたと考えられます。
モバイルインターネットの通信速度は前年よりも2倍以上速くなり、1387kbpsになりました。速度が上昇する理由は複数ありますが、大きな理由の一つに2Gから3Gへ移行したことがあげられます。2013年の段階でもモバイルユーザーの68%は2Gを利用しており、3Gは29%です。しかし、3Gへの移行は順調に進んでおり、2016年には3Gユーザーが2Gユーザーを上回ると予想されています。
また、モバイル通信事業者のネットワークからオフロード(通信をWi-Fiなどに切り替えること)したトラフィックを含めれば、今年のモバイルトラフィックは前年比81%増加ではなく、98%増加になったであろうと書かれています。
Agile Catの訳したGigaomの記事には、日本はモバイル通信事業者(セルラー)の通信を世界一利用しており、平均で1.87GBとなっています。二番はアメリカの1.41GB、三番は韓国の1.25GBが続きます。これは4Gの普及がトラフィックの増加を促進していると考えられます。また、日本においてはパケット定額制でいくら通信しても料金は一定ですが、世界の標準はパケット量に応じて料金が変わる従量課金制のため通信を抑えているという背景もあるでしょう。
2018年までにモバイルはどうなるのか
Ciscoは2018年までに、モバイルインターネットの世界には、次のような変化があるとしています。
- 2014年(今年)にインターネットへ接続されているデバイスが世界人口(約72億人)を超える
- 2016年にモバイルの平均接続速度は2Mbps(2000kbps)を超える
- 2016年にタブレットのトラフィックは月2.5エクサバイトを超える
- 2018年にモバイルデータトラフィックは月間で15エクサバイトを超える(年間180エクサバイト、現在の10倍)
- 2018年に4Gトラフィックはモバイルトラフィックの半分を超える
- 2018年にモバイル通信事業者のネットワークトラフィックを、Wi-Fiのトラフィックが上回る
- 2018年に102億台のモバイルデバイスがインターネットに接続する
- 2018年にはアジア太平洋地域がモバイルトラフィックの2/3を占める
また、2018年までに最もモバイルトラフィックが成長する地域は中東及びアフリカ、次いで中央及び東ヨーロッパです。アフリカは最後のモバイル市場と言われているため、まずはモバイルが普及することによってトラフィックが増えるということでしょう。また、中東は現在スマートフォンが急激に普及しており、これもトラフィックの急成長に大きく関わっていると考えられます。
出展 : Cisco Visual Networking Index
最後に
中国でのスマートフォン出荷台数が緩やかになったという調査があり、そのためスマートフォンの爆発的な普及は終わったのかとも言われていますが、スマートフォンの普及とトラフィックは順調に増えています。特に日本を含んだアジア太平洋地域はトラフィックを消費する”最大の市場”であるため、スマートフォンの所持率は今後も伸び続けるでしょう。
Gigaomの記事にある日本人モバイルユーザーのセルラートラフィックは世界一というのも見逃せません。日本は通勤時間が長く、その間に携帯電話をいじるという文化がありました。また、PCを持たずスマートフォンだけでインターネットを済ませているという人も増えていますので、ある意味では当然なのかもしれません。パケ放という最強の武器もありますからね。
調査の中では、ウェアラブルデバイスを含んだ全てのものがインターネットに繋がるInternet of Everything(IoE)の現状も詳しく書かれていますので、気になる方は必見です!
(Photo: On the Verge of Siri by Manny Valdes)