Paypal Hereや楽天スマートペイの登場で、日本でも脚光を浴びてきたモバイル決済。アメリカではモバイル決済サービス『Square』の年間決済処理額が100億ドルを超えるなど、力強い発達を見せています。
では、今年、モバイル決済はどのような方向へ向かうのでしょうか?
ICM Researchが発表した2013年のモバイル決済展望を翻訳して紹介します。
2013. The year of the Mobile Wallet?
1. 市場はまだ準備ができていない
まだまだ非接触型の決済は発展途上にあります。消費者も80%が非接触型決済を意識しているものの、実際に使っているのは8%に留まります。
この理由はモバイル決済に障壁があるからだと考えられます。端末が少ないことと、店舗のプロモーションが足りないこと。そして、消費者がモバイル決済に対して不安を持っているからです。
携帯電話を無くしたときに悪用される可能性がありますし、電池が切れたときにどのように決済すればいいのか、という不安もあります。
モバイル決済を促進するには、こうした不安を解消する必要があるでしょう。
2. スマートフォンユーザー全員が技術に精通しているわけではない
スマートフォンのユーザーは着実に増えています。しかしスマートフォンユーザー全員が、こうしたモバイル決済のような技術に精通しているわけではありません。モバイルコマースはポピュラーになりましたが、モバイル決済の行っている人はそれほど多くありません。
1.で記したものに加え、セキュリティ面でも不安があるからです。
スマートフォンの普及よりも、モバイル決済について深く利用してもらう必要があるでしょう。
3. NFCの普及がそれほど進んでいない
NFCを搭載したスマートフォンが多いわけではなく、多くの消費者が非接触決済ができるわけではありません。
スマートフォンは高価であるため、長期契約を結ぶ人が多くいます(注:海外にも2年縛りのような制度が存在するためです)。そして、消費者の多くは、NFC対応のスマートフォンを手に入れるために、解約することはないでしょう。
Key findings from the research
- 34%の消費者がクーポンやチケット、交通手段のチケットをモバイルで支払いたいと答えました。
- この質問をスマートフォンユーザーのみに限定すると、46%になります。18-24歳が55%、25-34歳が49%と、特に若年層が関心を示しています。
- 値引きなどのインセンティブがある場合は、51%の消費者がモバイル決済をしたいと答えました。
- セキュリティなどの不安が解消された場合も、51%の消費者がモバイル決済を行いたいと答えています。
- 国民(イギリス)の10%が24ヶ月以内に財布を紛失しています(多くは18-24歳)。55%の人はモバイルを落としたときの方が、財布を落としたときよりも心配になると答えています。
- 消費者が望んでいるモバイル決済でのセキュリティと保障:銀行と携帯キャリアによる金銭的損失の保障(56%)、トランザクションごとの暗証番号入力(43%)、もしくは入力後にトランザクションが可能になる(37%)、モバイルが遠隔で電源を切れるようになる(40%)、日ごとの上限設定(34%)、生体認証(33%)、声帯認証(24%)。
What needs to happen in 2013 for Mobile Wallet adoption?
ICM ResearchのJamie Belnikoff氏は以下のように述べています。
消費者はカード、イベントチケット、交通機関のパスをひとつにして管理できるようになることを望んでいます。また、こうした使い方をすることで得られるインセンティブなどの利益を期待しています。
しかし、安全上の懸念や、店舗のプロモーションやNFC端末の不足など、いくつかの懸念事項があります。
ただ、Google Wallet、Passbook、Oyster cardsのような方法がありますし、にもSquareやPaypal Hereのようにモジュールを接続して、モバイルでカード決済を行うという方法もあります。
市場では、そうしたモバイル決済が普及していくと思われます。合わせて、消費者から信頼を得るために、セキュリティの強化とインセンティブの用意が重要になるでしょう。
端末や店舗プロモーション、職員研修といったことを必要としない方法にこそ、2013年にモバイル決済が成功か否かの鍵があると信じています。
2013: The year of the Mobile Wallet?(ICM Research):http://www.icmresearch.com/2013-the-year-of-the-mobile-wallet
2013年のモバイル決済は
最初の3つは、モバイル決済にとってあまり明るくない調査結果ではありましたが、Key findingを見てみると、それほど暗い内容でもないことがわかります。
この調査結果の内容を踏まえて、4つ重要なことがあるかと思います。
- 消費者のセキュリティ上の不安を取り除くこと
- 消費者がモバイル決済を使おうと思うインセンティブがあること
- モバイル決済に抵抗が少ない若年層から取り込むこと
- 導入する実店舗に大きな負担がないこと
決済サービスが普及するには、消費者からの信頼が何よりも大きな鍵となります。
2013年こそ、モバイル決済がメジャーな決済方法になって欲しいですね。