「マスマーケティングの時代は終わった。過去の常識は、もう、通用しない」
株式会社フィナンシャル・インスティチュートの川北さんと前田さんの翻訳・監修 ブライアン・ハリガン(HubSpot社CEO)、ダーメッシュ・シャア(HubSpot社共同創業者)の著書「インバウンドマーケティング(Inboud Marketing -Get found using google,social media,and blog)」が2011年1月27日に日本で発行された。それから1年と半年、インバウンドマーケティングは脚光を浴びている。
インバウンドマーケティング(Inboud Marketing)とは広告出稿などに頼るのではなく、興味のある消費者は自ら検索をしたりソーシャルメディアで聞いたりして調べてくれるということを信じて、消費者自身に「見つけてもらう(Get found)」ことを目的としたマーケティング施策。具体的には見込客に対して有益なコンテンツをネット上で提供し、検索結果およびソーシャルメディアにて「見つけられ」やすくし、自社のサイトに来てもらいやすくしていくものだ。
このマーケティング手法はブライアン・ハリガン(HubSpot社CEO)、ダーメッシュ・シャア(HubSpot社共同創業者)によって2005年に提唱された。
近年においては自社サイトを訪れてくれた人々を顧客化するまでの育成プロセスも含めて、「見つけられる」ことからはじまるの一連のマーケティング活動を「インバウンドマーケティング」と呼ぶようになっている。
インバウンドマーケティングは、従来のマスマーケティング、ダイレクトメール、コールドコールなどの「アウトバウンドマーケティング」と対比された考えでもあり、情報過多時代におけるマーケティングコンセプトとして注目されている。
従来の広告を中心としたマーケティング手法を「アウトバウンドマーケティング」としたときに対比される考え方であり、消費者が「Webを利用して自ら見つけ出す」ことを前提としたマーケティング手法が「インバウンドマーケディング」であり、現在注目を集めている。
なぜ、注目を集めているのだろうか。その背景に迫ろう。
インバウンドマーケティングが提唱される背景
インバウンドマーケティングの登場には環境の変化及びそれによる消費者の行動変化が挙げられる。消費者行動変化は何か気になることがあった際にはgoogle,Yahoo!,Bingなどの検索エンジンを利用して調べることがすでに日常化しており、商品やサービスを購入した際にはその感想(賛否ともに)をソーシャルメディアで発信する流れになっている。
また、ストリームとして発生するソーシャルメディアのフィードをNAVERまとめなどにより、フロー情報すらストック情報としてユーザーは利用している。口コミが一時的な現状としてだけでなく、その経緯も含めて消費者は確認することができるようになっているのだ。
つまり企業はメッセージだけでなくこれまで以上に消費者の評価が重要になるとともに、そうしたオンライン上のコメント(クチコミ)が認知や来訪の導線となっている。
そうした意味で企業はSEOなど従来の検索エンジン対策を行なうとともに、SMO(ソーシャルメディアオプティマイゼーション)などの施策を通じて、消費者に見つけてもらいやすくする環境を整える必要がある。
さらに流入を自然検索やソーシャルメディアにシフトするだけではなく、各経路ごとのリード(見込み顧客)を管理し、顧客転換率を計測することで、注力すべき経路や、効果の高いコンテンツを把握し、より効率を高めることも重要である。顧客へ転換するためにはメルマガ発行やステップメールなどの施策も考えられる。
HubSpotの創業者二人によれば、従来型の人々に呼びかけ、目を奪う「アウトバウンドマーケティング」は、情報過多の時代においては崩壊をし始めています。そこで、人々が情報を探しているタイミングに応じたマーケティングを考える必要が生まれてきた。その中で最も注目されているコンセプトの一つが「インバウンドマーケティング」なのですと話している。
スケダチ代表の高広さんはインバウンドマーケティングの流れを以下のように説明している。
「Inbound marketing」でもっとも重要な考え方は「get found(見つけられる)」ということ。ターゲットする見込み客に自分たちが「見つけられる」ためのマーケティングを行うことが、「インバウンドマーケティング」の第一ステージだと言える。そのために重要なのがコンテンツなので、その部分に注目した場合は「content marketing」と呼ばれることもあるが、ほぼ同じムーブメントである。
オンラインマーケティング、デジタル領域のクリエイティブの世界では長らく「content is king」と言われてきたが、Inbound marketing の世界ではむしろ「content does matter」と言ったほうが正しい。検索行動が普通のものとなり、ソーシャルメディアが普及した今では、企業が生み出した king なコンテンツとはいえ何の策も講じなければ素通りされてしまう可能性がある。自分たちが必要とするターゲット層にとって役立つもの(useful)でなければ、気難しく、選り好みする(picky)な人々の足を留める(目を奪う、時間を奪う)ことなどできない。
Content Marketingと呼ばれるものは、ソーシャルメディアなどによって、情報の伝播が消費者の手によって行われやすくなったことと、それによって生まれている情報のパイプライン上に、どんな規模の企業であっても情報をのせやすくなったことを背景に、自社の潜在的・顕在的ユーザーに対して良質なコンテンツを提供することでエンゲージメントを構築することを指す。SEOやソーシャルメディアの活用(=Web PR: USでは“Web PR”といえばソーシャルメディアを使って情報を拡げることを指す意味になりつつあり、日本のように有料で媒体社の記事にように配信することではなない)ができるようになったことで、安価に人々とつながることができるようになったことは、マーケティングの時代変化を語る上で外せないが、その最右翼に contentを重要視する、Inbound marketing があるのである。
Inbound marketingはcontentを重視するものの、それは全体を構成する1コンポーネントにすぎない。Inbound marketingは、SEO、ソーシャルメディアマーケティング、動画、ブログ、Webinar や White paper、メールマーケティングなどなどを組み合わせたものと考えたほうがいい。Social media marketing や blog marketing、Facebook marketing、Twitter marketingなどのように、特定のプラットフォームやツールを対象にしたマーケティングではなく、それらを集合させた オンラインにおける integrated なマーケティングが Inbound marketingなのだ。
これまでのマーケティングが、“Rent an Audience”だったのに対し、“Build Assets”、つまり、人々のリーチを借りる・買う時代から、自分たちのブランドアセットを作ることでマーケティングを進めていこうというマーケティングの姿勢である。それゆえ、Inbound marketing は、検索連動型広告やアフィリエイト広告の流れの次、そしていわゆるオウンドメディアマーケティングと出会うところに存在するマーケティング手法だと考えている。
ついに日本上陸 インバウンドマーケティング専門会社「マーケティングエンジン」
また高広さんはインバウンド専門会社株式会社マーケティングエンジンを設立。株式会社コムニコさんと株式会社スケダチさんが完全バックアップという体制だ。なによりもこの分野において、優秀なツールHubSpotを取り扱う。HubSpotはインバウンドマーケティングの提唱企業で、インバウンドマーケティングの統合ソフトウェアを世界45カ国で中小のB2B企業を中心に、6000社以上に提供している。HubSpotの提供するインバウンドマーケティングの統合ソフトウェアは、CMS(コンテンツ管理システム)やSEO対策、ソーシャルメディア運用、見込み客管理、各マーケティング施策の効果測定・分析ツールなどが統合化されたソフトウェアで、人気が高まっている。マーケティングエンジンのサービスラインアップは実に豊富だ。
インバウンドマーケティング基本戦略策定
リードペルソナ策定・戦略キーワード策定
リードセグメンテーション策定
インバウンド基本シナリオ策定
運営プロセス策定・運営マニュアル作成
インバウンドマーケティング環境構築
HubSpot初期設定
インバウンドマーケティング用ブログデザイン
既存Webコンテンツ移行
外部システムHubSpot連携開発
インバウンドマーケティング運営コンサルティング
インバウンドマーケティングの”PICCEA ( Plan > Inbound Content Creation > Execution > Analyzation )”の運営サイクルの適正な遂行をコンサルタントが支援します。
運営コンサルティング(オンサイトミーティングへの参加)
週次レポート作成
運営支援:ToFu対策
見つけてもらいWebにトラフィックを引き込む、引き込んだビジターに期待を抱かせリードとして獲得する ToFu 対策をコンテンツの企画/制作および最適化で支援します。
ブログコンテンツ基本方針企画
ブログコンテンツ制作(ブログコンテンツおよびソーシャルメディア投稿用サマリ)
プレミアムコンテンツ企画制作
プレミアムコンテンツ向けCTA(コール-to-アクション)・ランディングページ最適化
インバウンドマーケティング対応ニュースリリース制作
運営支援:MoFu対策
獲得したリードに最適なタイミングに最適なコンテンツを届けることで確実に購買プロセスを推し進めていく MiFu 対策をコンテンツの企画・制作および最適化で支援します。
Eメールオートメーション基本方針策定
Eメールオートメーション用コンテンツ制作
EメールオートメーションHubSpot設定
Eメールオートメーション最適化
プレミアムコンテンツ企画制作
インバウンドマーケティング運営ソフトウェア HubSpot
多岐に渡るインバウンドマーケティングの戦術をバラバラのツールで管理していてはそれだけで大変です。統合型マーケティングソフトウェアのHubSpotによるとリードとコンテンツと分析の一元環境で施策の実行を支援します。
HubSpot利用サポート
HubSpotとは何か?
創業者であるブライアン・ハリガン(CEO)とダーメッシュ・シャア(CTO:最高技術責任者)の2人がマサチューセッツ工科大学(MIT)で2004年に知り合った後に、2006年6月に設立された会社だ。2人は、従来のマーケティングはすでに機能しなくなっており、コンテンツやソーシャルメディアなどを活用したインバウンドマーケティングが主流になると感じていた。
インバウンドマーケティングの難しい点は自分たちを知ってもらうことにあった。結果として、マスメディアを利用することを前提にしていたが消費者の行動は大きく変化している。その中心となるものがインターネットのあり方にあるだろう。ネット上で情報を吟味するようになっているのだ。広告だけでない動線設計が重要になり、そのための活路として「検索」や「ソーシャルメディア」があるのだ。つまりインターネットマーケティングの重要性が益々向上しているということである。
しかしそのためのツールはブログ、Facebook、Twitter、SEOなどと独立しており分断されていて複雑でわかりにくいという点に着目し、それを1ヶ所でコントロールできるASPサービスを提供するというコンセプトのもとにHubSpotが立ち上げられている。
HubSpotは2007年から2011年にかけてトータル6,500万ドル(約52億円)の資金を調達し、顧客数は2008年5月から8月の間に400から600に、2009年7月には1,400となり、2010年初めには2,000、そしてその年の11月には3,600、2011年7月には5,000と増加。
2007年から2011年の間に売上高は6,000%の成長を遂げており、Boston Business Journalによると2011年の売上は2,900万ドル(約23億円)となった。
インバウンドマーケティングの全体構造〜3つのステージ
株式会社マーケティングエンジンにて説明がなされているインバウンドマーケティングの全体構造について確認しておこう。
インバウンドマーケティングは大きく3つのステージに分けられます。
ToFu (Top of Funnel) :
人々に「見つけられ」てサイトにトラフィックを呼び込み、コンテンツの提供によってその人たちから期待と信用を得て、個人情報を提供してもらうまでのリードジェネレーション(lead generation 見込客の創出)のステージ
MoFu (Middle of Funnel) :
リードの購買マインドを高め購買プロセスを進めていくリードナーチャリング(lead nurturing 見込客の育成)のステージ
BoFu (Bottom of Funnel) :
購買意欲の高まったリードとのクロージングのステージ
※リード(Lead):インバウンドマーケティングおいては、企業に個人情報を提供し、企業側がコンタクトを取れる状態にある人々のことを指す。
見つけられ、期待される:ToFu
まず、人が求める役立つ情報をWebに掲載し、検索エンジンとソーシャルメディアを通じて見つけられ、自社Webサイトにトラフィックとして呼び込みます。
その際、集めたい人たちがどんなキーワードで検索して、どんなコンテンツを求めているかをしっかりと検討・検証しながら定期的に優良なコンテンツを追加していくことがポイントになります。
そして、プレミアムコンテンツ(eBook、無料オンラインセミナーなど)と呼ばれる情報価値の高いコンテンツを用意し、その提供と引換えにサイト来訪者から個人情報と継続コンタクトの許諾を得るように設計します。
顧客の買いたい気持ちを育む:MoFu
獲得したリードは「購買」からは未だ遠いところにいることがほとんどです。そこから更なる情報提供を通じて、欲しいという思いや自分にとって必要だとの確信を育成・醸成していきます。
相手にとって最適なタイミングで、最適な内容のコンテンツを提供することが重要なポイントになります。リードの現状について、Web上での行動やコンテンツとの交換で入手する情報とを整理し、判断しながら有効なコミュニケーションを継続的に行なっていくことになります。
マーケティング担当者が重要な時代へ
既存のマーケティング手法が効かない。その通りだ。消費者行動の変化をインターネットがものの見事に変えている。さらにこの変化が継続的に行われている。新しいマーケティング手法を試していかなければならない。自分たちのこれまでの方向性を変化させなければいけない。
一方で、その変化の中でも自分たちのコアコンピタンスを見失うわけにはいかない。ユニークさに欠けてしまうからだ。何で競争するのか、何を起点に考えるのか。シンプルになる世界、フラットになる世界の中で、自分たちはユニークであり続ける必要がある。マーケティングを再度検討するタイミングに来ているようだ。
次回はインバウンドマーケティングをさらに掘り下げてみていきたいと思う。
「インバウンドマーケティングのその他の記事」はこちら
- 日本にも上陸。インバウンドマーケティングとHubSpotとは何か?
- インバウンドマーケティングの概要整理とHubSpotがすごい理由
- インバウンドマーケティングを始めるために知っておくべきこと
- Web制作/Web開発に集中するだけではあなたのWebサイトはマーケティングのハブにならない
「インバウンドマーケティングをはじめよう」の詳細はこちら
- インバウンドマーケティングをはじめよう その1 はじめに
- インバウンドマーケティングをはじめよう その2 FACTS(アウトバウンドマーケティングとインバウンドマーケティングの違い)
- インバウンドマーケティングをはじめよう その3 インバウンドマーケティングとHubSpot
- インバウンドマーケティングをはじめよう その4 「TOFU」「MOFU」「BOFU」
- インバウンドマーケティングをはじめよう その5 進化するインバウンドマーケティングメソッドについて
- インバウンドマーケティングをはじめよう その6 インバウンドマーケティング3.0における4つのステップ