基本無料(F2P: Free to Play)は様々なビジネスに影響を与えましたが、今日は特にゲームへ焦点を当て、現在開催中のGDC(Game Developers Conference)のプレゼンスライド『Should I Pay or Should I Go?』を見てみたいと思います。
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オンラインゲームから始まり、スマートフォンアプリ、コンシューマー、何とゲームセンターのアーケードにまで進出したF2P。ご存知の通り、多くのゲームが有料ゲーム(P2P: Pay to Play)からF2Pに移行しています。これにより、今までのコンシューマーやPCゲームで遊んでいた人々だけでなく、よりカジュアルにスマートフォンなどでゲームを楽しむ人が増えました。この差は歴然で、アメリカでは1億1000万人がF2Pを楽しんでおり、ゲーム人口の8割に匹敵します。
市場規模から見ても広がりは明らかで、アメリカのバーチャルアイテム市場(課金アイテム)は30億ドルに達しています。
オンラインペイメント
この時の支払い方法として、クレジットカードやデビットカード以外のものが多く選択されています。例えば、プリペイドカードや、銀行振込、仮想通貨(例: bitcoin)、モバイルペイメントなどがあげられます。
では、なぜクレジット・デビットカード以外のものが選択されているのでしょうか? ゲーマー側と、ディベロッパー側には、次のような思惑があるようです。
- ゲーマー:支出、プライバシー、セキュリティがクレジット・デビットカードよりもコントロールしやすい。
- ディベロッパー:ローカライズするときにオプションを増やせる、支払い能力を超えることがない、コンバージョンが上昇する。
ユーザーが満足している証拠に、支払い方法のアンケート調査を行った結果、最も満足度が高かったものはBlizzard社が提供するWorld of Warcraftのプリペイドカードとなっています。
F2Pへ課金しているのは誰か?
結論から言えば、最も課金しているユーザー層は、18-24歳の男性です。この層は月に30.54ドル(約3000円)の課金を行っており、バーチャルアイテム市場を牽引しています。最も課金している年齢も同じく18-24歳となっていますが、女性は3.95ドルに留まっています。
次に高いのが13-17歳の12.85ドルで、25-54歳はどの層を切り取っても6ドル台で推移しています。
以下、バーチャルアイテムのトレンド箇条書きです。
- ゲーマーの35%がバーチャルアイテムに課金したことがある。
- バーチャルアイテムで買われているトップ3
DLC(ダウンロードコンテンツ: レベル、マップなど)
仮想通貨(bitcoinやゲーム内通貨など)
ゲーム内アイテム - バーチャルギフト
コンソールもF2Pに向かう予兆がある
ゲームの情報に敏感な人であれば、コンソールでもF2Pのゲームがリリースされていることもご存知でしょう。日本で言えばPhantasy Star Online 2がPlayStation VitaでF2Pゲームとしてリリースされていますし、世界的に流行しているものでもXbox 360版がリリースされたWorld of Tanksというタイトルがあげられます。
しかし、ARPUで見るとF2Pが9.15ドルなのに対して、P2Pは28.86ドルとなっています。また、コンソールのF2Pプレイヤーのうち46%は課金することはない、と答えています。
コンソールで遊んでいるゲーマーの半数以上がF2PのゲームがP2Pのクオリティに対抗できないとも回答しており、コンソールにおけるF2Pの“覇権”獲得にはもう少し時間がかかりそうです。しかし、F2Pプレイヤーの約50%はP2Pと同様のクオリティであると回答しているため、そう悲観する必要もないでしょう。
今後どうなるのか?
最後に、今後の展望という形で締めくくられています。
- F2PのARPUは17ドルになればP2Pを上回る。
- ゲーマーは単一のプラットフォームにあまりこだわらない。
そして、プラットフォームとデバイスを接続できるよう、強く望んでいる。 - F2Pはゲームだけでなく、多くの産業においてもビジネスを拡張するチャンス
個人的に思うこと
私もゲーマーの端くれなので、思うところを書いてみようかと。
F2PのゲームがP2Pに及ばないと、私は思いません。私は2年ほどLeague of Legends(以下、LOL)というF2Pゲームを続けています。競技性が非常に高くなっており、飽きるところがありません。すでに7万円ほど課金しており、たぶんこの数値は今後も増えていくでしょう。
翻って、実際にプレイしたP2Pのゲームを考えてみても、“2年も続いたゲーム”は中々出てきません。世界的な大作『Skyrim』や日本でも人気だった『モンスターハンターポータブル2ndG』をプレイはしたものの、半年も続きませんでした。熱中度合いは計れませんが、熱中の継続度に関してはF2PであるLOLの方が上だったと言えます。ゲームのクオリティも下回っているとは個人的に思えません。
また、P2Pで例にあげたSkyrimはダウンロードコンテンツ(DLC)を展開していますが、私は購入していません。つまり、Skyrim本体(セールの時に買ったので3000円以下)だけにしか、お金を支払っていないことになります。一方でLOLは基本無料でゲームをしつつ、ゲーム内アイテムを購入するため7万円使っています。私の例は少し極端だったとしても、お金を集める手法として、そう悪くないでしょう。
ただ、F2Pのゲームは“乱立しすぎ”だと思います。しかも、売れたものを捻らず真似したゲームが多く、“プレイする気にもならない”ものが多すぎるのです。(私なら元ネタの方をやります)
ゲーム業界を知る人に、アタリショックを知らない人はいないと思います。いわゆる『クソゲー』を乱発しすぎたことによって、人々のゲームへの興味が急激に薄くなり、市場を一気に縮小してしまった、という嘆かわしい事件です。(詳しくはWikipediaを参照してください)
F2Pも、このような事件を起こさないとは限りません。クソゲーを連発してしまった報いを受ける前に、現状が変わって欲しいな、と思います。