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Appleが屋内測位技術を搭載したiBeaconを活用開始! ……屋内測位技術って何?

先日、Appleが提供するiBeaconがモバイル決済に対応するかもしれない、という記事を見て、iBeaconに興味を持ちました。

The iWallet Is Coming(Forbes)

なお、タイトル的にはほぼ断定ですが、100%確実とは言えないので、かもしれないとさせていただきます。

iBeaconは、屋内測位技術の一種です。……と言っても、聞き慣れない言葉なので、ちょっと調べてみました。

屋外であれば人工衛星を使ったGPSの位置測位技術が使えます。しかしこれは空が見える場所でないと、精度が極端に落ちる(場所によっては出来ない)という欠点があります。もともと屋外でも十数メートルの誤差が生じたりするのですが、これは将来的に準天頂衛星「みちびき」などによって解決されると考えられています。しかし、屋内で起こる誤差はどうしようもありません。

これを解決するために生まれたのが、屋内位置測位技術です。

屋内測位技術

屋内測位には複数の技術がありますが、日本に最も馴染みのあるであろうIMESについて、見てみましょう。

IMES(Indoor Messaging System)は日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が考案した屋内測位技術です。JAXAに詳しくこれを解説するページがあるので、それを参考に、さらに噛み砕いてみましょう。

【参考】日本発の屋内外シームレス測位の実現へ(JAXA)

開発背景

前述の通り、準天頂衛星「みちびき」によって、屋外の正確な位置が得られるようになりつつあります。しかし、実は都会で暮らしている人の行動範囲は、7割が屋内なのです。衛星を使った測位では、屋内の正確な場所を取得することは困難を極めます。

そこで、屋内の位置情報を提供することに意義があると考え、2011年6月にIMESコンソーシアムを立ち上げ、普及と発展のための情報交換の場としました。

どういう働きをするの?

IMESの電波は、GPS衛星と同じものを使っています。つまり、GPSで測位ができるデバイスであれば、IMESの測位情報を受信できるわけです。しかしまだ開発段階ということもあり、市販のデバイスにはIMESの暗号を解読できるソフトウェアが無いため、専用の受信機が必要となっています。

IMESは経度、緯度、高さを測位できます。基礎的なものにも見えますが、高さの精度が驚異的です。なんと、建物の“何階”にいるかという情報まで測位します。さらに、この情報は国土地理院の提供する“場所情報コード”に結びついており、既存のGPSだけでは難しかった建物の測定まで可能になっています。

これによって、例えば救急車は急患がどこにいるか、かなり正確な情報が分かるようになるため、ピンポイントでその場所に向かうことができるようになります。

もうひとつ優れた点があります。それは、屋外から屋内に入ったときに、GPSからIMESへ、測位システムがシームレスに切り替わることです。将来的には携帯電話の基地局のように、どこへいても正確な位置情報が測位できるようになることを目指しているとのこと。

こんな実験も

以前にもご紹介したことがありますが、位置測位とARを組み合わせた実験が種子島で行われました。種子島の高校生が作った動画がありますので、ぜひご覧下さい。(※現在動画の閲覧はできません)

で、iBeaconとは?

ここまでIMESの解説をしてきました。ところでiBeaconは厳密に言うと、IMESではなく、IPS(Indoor Positioning System)と言います。どちらも屋内測位技術で、簡単に理解する上で意識する必要はないのでご安心ください。

IMESはGPSと同じ電波を用いていましたが、iBeaconはBluetoothを使ってデバイスに位置情報を提供します。ということは、iBeaconの位置情報を受信するには、Bluetoothに対応していればよいということです。ただ、Low Energy Bluetooth(BLE)という、Bluetooth 4.0、つまり最新バージョンに対応していなければなりません。 現在はiOS7.0以上のiPhone4S以降のデバイスとAndroid 4.3のデバイスが受信できるようです。

最近テック界隈でiBeaconが話題となっていますが、それはAppleが正式にApple StoreにiBeaconを設置し、活用を初めたことにあります。日本では非対応ですが、アメリカのApple Storeアプリは次のようなアップデートが加わりました。

Apple Storeの店内で新しい通知を受けられるようになりました。あなたの場所に基づき、iPhoneに役立つ情報を届けます。

Apple Store

実際にiBeaconが導入された店舗へ足を運んだThe Vergeは、以下のような通知がきたと書いています。

  • 店舗を歩き始めてすぐに、Welcome通知が私を迎えた。
  • 数分間iPhone 5Cを試した後、iPhoneの下取りシステムがいかに簡単か、通知を得た。

A shopping trip with iBeacon, Apples’s secret weapon for navigating stores(The Verge)

同じくApple Storeに向かったApple Insiderには、バーコードのスキャン機能が追加されたと書かれています。

iBeaconはまだ未完成

The Vergeが従業員に尋ねたところ、「iBeaconは進行中のもの」と答えています。

iBeaconを詳しくまとめたApp Bankの記事によれば、まずは3つの問題点があるとのこと。

  1. 同じ通知が何回も表示される通知される
  2. バリエーションが少ないため実用的ではない
  3. iBeaconを使った他社サービスは利用者の動向を記録・分析するためプライバシーの懸念がある

1.は技術的、2.はマーケティング的な問題なので置いておくとしても、プライバシーの問題は位置情報を利用する上で付き纏う問題で、折り合いが難しいところでもあります。懸念を払拭するためにもAppleがガイドラインを提示すると思いますので、そちらを待つのが賢明かもしれません。

最後に

屋内測位技術は、まだまだ開発が始まった段階です。屋内の行動解析が進むことによる経済効果への期待、顧客との関係を良くする等々、様々な望みを持った技術なので、今後も注視していきたいと思います。

一番最初に触れたAppleがモバイル決済に参入するかもしれない、という話ですが、位置情報を活用した決済をPayPalが既に行っているので、あり得ない話でもないでしょう。ただPayPalは屋内測位技術を活用しているわけではないので、それよりも一歩進んだものになるかもしれません。

(Photo: Location Geeks by Robert Scoble)

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