私たちは、日々たくさんのデザインに囲まれて生活しています。毎日、気付かないうちにさまざまな場面でさまざまなデザインと触れ合っているのです。
今回は、私たちの生活の一部を切り取って、デザインについて考えてみましょう。
デザインとは
私はデザインのことを、理解を促し、生活を良い方向へ導くものだと考えています。
良質なデザインは、見ただけですぐに理解でき、戸惑うことがありません。一例として、iPhoneのことを考えてみましょう。iPhoneは初めて触った人でも、直感的に操作できます。これは、iPhoneが人にとってすぐに理解できるよう設計されているからです。実際、それ以前の携帯電話は、説明書なしに機能を把握することが困難でした。説明書を見ることなく、直感的に操作できるiPhoneは、まさに良質なデザインと言えます。
また、使いやすさはより良い生活につながります。例えば、ボールペンが球体の形をしていたら書きにくいですよね。人にとって使いやすいデザインにすることで、私たちの暮らしを助け、生活の質を向上してくれるのです。
デザインの種類
私たちの生活には、どのようなデザインが関係しているのでしょうか。
今、私たちの身の回りにある家具や製品、空間などは、専門のデザイナーによってデザインされています。
デザインと言ってしまえば一言ですが、実はさまざまな種類に分けられます。今回はその中でも、生活に関わるデザインをいくつかご紹介します。
プロダクトデザイン
広く製品デザインのことを言います。工業製品などを中心とした「インダストリアルデザイン」と分けて考えると、「プロダクトデザイン」は、どちらかというと食器や家具など日常生活に身近な製品のデザインになります。
インダストリアルデザイン
主に産業や工業を中心とした工業製品(自動車、電化製品、業務用機器など)の美しさやユーザーにとっての使いやすさを目的としたデザインです。
パッケージデザイン
食品や飲料品、日用品などといった商品の外装や内装、容器などのデザインになります。商品の品質を保てるような実用的なデザイン、また、ユーザーが商品とコンセプトに違いを抱かないようなデザインが求められます。
インテリアデザイン
店舗や住居などの建造物や自動車や鉄道、飛行機などといった乗り物などの室内の内装のデザインです。壁紙や内装材をはじめ、家具から照明、カーテンなど室内に関わる内装のほぼ全てが含まれます。
ファッションデザイン
お馴染みの洋服や鞄、靴などファッションに関するデザインです。舞台や映画などで着用する衣装のデザインとは違い、日常的に着ている洋服のデザインのことを指します。
グラフィックデザイン
文字や写真、配色などを利用して、ポスターやロゴタイプ、雑誌、新聞などの広告、展覧会やコンサート、映画などのフライヤー、チラシなどといった広範囲に渡った平面的なデザインになります。
エディトリアルデザイン
主に雑誌、カタログ、新聞、書籍など書物に関して、読み手に読みやすいよう文字や写真、図の整列や配置などを行い、ユーザーの読みやすさや視覚的効果を得られるようにしています。
ブックデザイン
装丁とも呼ばれ、主に書籍の表紙、カバー、見返し、帯、扉など書籍の外観のデザインのことを言います。
ウェブデザイン
主にウェブサイトやウェブページの全体の視覚的要素を設計、整理、構築などになります。
UIデザイン
コンピュータと人との間で、情報を出入力する方式や操作のことで、ユーザーに使いやすい入力方式や操作性を提供するのがUI (User Interface)です。
UXデザイン
デザインした製品・サービスを利用したときにユーザーが感じたことをUX(User Experience:ユーザー体験)と言います。ユーザーがどのような人で、どのような時に使われているかを理解し、最適なものを作っていくのがUXデザインです。
この他にもたくさんのデザインが、私たちの生活を支えています。
日常に溢れるデザイン
でも、本当にこれらのデザインが自分の生活に関わっているのか、ちょっと疑問ですよね。実感しやすいように、朝食の風景を切り取って、デザインを見てみましょう。
パンや牛乳、ジャムなどの食料製品には、パッケージデザインが使われています。パッケージデザインでまず最初に行なうのは、食品を入れる容器の形状を決めることです。この容器の形状が決まらないと、次の外装のデザインに入ることができません。
食品を安全に保存することができ、ユーザーが使いやすく、輸送の際に壊れにくいなどの条件をクリアして、初めて外装のデザインへと進んでいきます。さらに市場調査を行い、製品へのコンセプトイメージを決めていきます。コンセプトイメージでは、製品のイメージを損なわず、店頭へ並んだときのイメージ、パッケージで見せたいメッセージなどを踏まえて、製作を行います。
そして、印刷段階で色の校正を行い、成型を踏まえ、納品になります。
(Photo: Eurostar breakfast by Jessica Spengler CC-BY)
食器やコップのようなプロダクトデザインでは、まず、市場調査から始まり、製品のコンセプト、材質や形状、色などが決まったら、テスト製品を製作し、安全性を兼ねた実証実験が行なわれます。実証実験を行う中で、必要に応じて形状の見直しや設計を繰り返し、量産に問題点がなければ生産へと進んでいきます。
製品の安全性を確保できるまで、何度も実験とデザイン設計が繰り返し行って、品質に問題が無いと分かって、ようやく私達の手元に届くのです。
(Photo: a glass of water by [cipher] CC-BY)
食器やコップも、人の手の形に馴染むようにデザインされています。例えば、ほぼすべてのコップに共通するのは、円錐の形状になっているということです。その理由には、持ちやすさと飲みやすさなどの人間工学に基づいたもの、重ねることができるなどの効率の良さに基づいたものが考えられます。
円錐の中央に膨らみのあるデザインをよく見かけますが、このようなデザインも持ちやすさと同時に丸みのある形状から、親しみやすさや安心感といった心理的な効果があるのです。
このように私たち人間だけでなく、環境や安全性、その他さまざまな要素を考慮しながら、デザインは作られているのです。
最後に
日常に隠れているデザインを見つけられましたか? 今回は、日常や生活に関するデザインを紹介してきました。良質なデザインは、人々に長く愛され、好まれて使われます。そうして、デザインは人の営みの中に溶け込んでいくのです。少し目を向けると、私たちの日常にはデザインが溢れていることがわかりますね。
デザインは、いつの時代もどこの場所でも人々と結びついてきました。私たちの生活とともに歩み、日々大きく進化を遂げ、今日も私たちの暮らしを助けています。
(Photo: Applications on Packaging by VFS Digital Design CC-BY)