今回のタチヨミは、世界最高峰のクリエイティブエージェンシーAKQAのクリエイティブディレクターのアジャズとNIKEデジタルスポーツ担当副社長ステファンの対談形式によるクリエイティブワークの仕事術に関する刺激的な作品「ベロシティ」です。このふたりは12年にもわたってNIKEのデジタルコミュニケーションプロジェクトで多くのファンを獲得しインスパイアしてきました。そんな彼らの「ベロシティ宣言」とは、どのようなものでしょうか?早速タチヨミ。
■今回のタチヨミ
『ベロシティ』
アジャズ・アーメッド、ステファン・オーランダー著
単行本: 362ページ
出版社:パイ インターナショナル(2012/8/5)
定価:1,800円(本体)+消費税
■書いてるの誰?
アジャズ・アーメッドは、数多くの優れた作品を制作しているクリエイティブエージェンシーとして名高いAKQAの創設者。ナイキをはじめフォルクスワーゲン、ヴァージン、アウディ、ハイネケン等のクリエイティブを手がける。
ステファン・オーランダーは、ナイキ、デジタルスポーツ担当副社長。アップルと共同で開発した革新的なNike+を含め、ナイキが誇る差先端の消費者体験の開発を担っている。
■彼らのベロシティ宣言
Velocity(ベロシティ)
方向性をもつスピード、速度、迅速性。
本書では、新しいテクノロジーや流行が次々に登場し、
価値観が毎日のように変わり、人、もの、情報など
あらゆるものが「つながっている」、
不確定でスピーディーな新しい時代の概念、環境を指す。
■この本が言いたいコト
この世で最もパワフルなのは、テクノロジーではない。想像力である。
■この本のヤマ場
ステファン:
人を説得しようとする必要なんかない。ただ、よりよい方法を示せばいいだけなんだ。テクノロジーを使えば、昔からずっと変わらない「人間らしい行動」をもっと効果的な方法でスムーズに行えるようになる。友だちを作り、人との出会い、社会のおかしな出来事、たわいのないおしゃべり、自分の売り込み、酔っぱらいのたわ言、遠くに住む家族の写真を見る喜び…。こういったことは、フェイスブックが新たにつくり出したわけじゃない。フェイスブックはテクノロジーを使って、元々人間がやっていたことを新しい方法で表現したり、楽しんだりできるようにしたんだ。
アジャズ:
「もし○○だったら良くない?」とか「それのどこがいいんだ?」と自問するだけでも、実際に何かを市場に出す段階で、かなり進出させることができるはずだ。「それはいつ手に入るの?」という答えが返ってくるようなら、そのプロジェクトは成功しつつあると思う。
ステファン:
「ものごとが変化すればするほど、本質はますます変わらない」という言葉は、真実をついていると常々感じていたけど、最近は、この言葉を使う頻度がますます増えてきたと思う。目新しいテクノロジーに気を取られて、本来の自分たちの役割を忘れつつあるなあと感じる時、いつもこの言葉を思い出すんだ。レベッカ・トゥーンクウィストの「Good Thing」の歌詞にもあったね。「何も変わっていない、でも、何もかもが違う」
■ココロにしみるこのコトバ
「ナンバー1の座を保つためには、ナンバー2のようにトレーニングすることが必要なんだよね」
「他とはまったく異なる画期的なアイデアをもつには、まったく異なる経験が必要だよね」
「収入や収益と同じぐらいに実験と学びを大切にする文化をつくり上げることが大切だ」
「どのブランドもソフトウェアカンパニーになる必要が出てくるだろうね」
「自分自身が、自分の顧客であるべきだ」
「ゴールは、お客様とのつながりをつくることであり、役に立つこと」
…キリがないのでこれぐらいにします、スティーブ・ジョブズとナイキのコラボの話も面白いです。
■読んだほうがイイ人
・ほとんどの企業の多くの人達は、これからは自分でコンテンツを書かなければならない時代なので、そのような役割の人たち。
・ソーシャルプラットフォームでクリエイティブワークを担当している人、そしてその人たちとつながって仕事をするマーケッター。
・最近、仕事に萎えている人。
■タチヨミてヒトコト
この本は、対談形式トークショーの再現になっているので、ベロシティというタイトル通りスピーディーに楽しく読めます。読者に覚えてもらいたいキーワードも各章ごとにまとめで整理されているので便利です。
ソーシャルメディアをどのように使うかというテクニカルなことだけではなく、クリエイティブワークのマインドや姿勢、アスリートとクリエイターの精神の共通性など、興味深いネタが満載でソーシャルメディアマーケティングを実践する際に参考になりそうです。
実はソーシャルメディアマーケティングで、クリエイティブワークについて言及した本は少ないのでこういう本がもっとたくさん出てきてくれるといいですね。企業のブランドを伝えるには、コンテンツやアプリケーションのクリエイティブが一番重要なのですから。
弊社のお話で恐縮ですが、はじめてお会いする方に名刺交換させていただくと、ほとんどの方が「ハイベロシティって何ですか?」と質問されるのですが、以前、ノーベル賞受賞者がおいでになる島津製作所の方々と名刺交換させていただいた時に、いきなり開口一番「おっ、ハイベロシティ、流体力学ダナ~!」と嬉しそうに仰っていただいたのがとても印象に残っています。
名前負けしないように時代とともに走り抜けられるように頑張ります、何卒ご支援を。