みなさんには『ネット上でクーポンを手に入れて、リアルの店舗へ行く』という経験はありますか? 意識しなくても、やっている人は多いかもしれません。
たとえばマクドナルドの『トクするケータイ』というサービスは、会員になることで、毎週クーポンが届きます。このサービスでクーポンをゲットして、マクドナルドに行くという人も多いのではないでしょうか?
『ネット上の活動を利用して、リアルの店舗に誘導する』という手法は、一大トレンドになりつつあります。
このトレンドを『O2O』と呼びます。
O2O
O2OはOnline to Offlineの略称です。ネット上のメディア(Online)から、実際の店舗(Offline)へ誘導して購買活動を促進する取り組みです。トリプルメディア(オウンドメディア・ソーシャルメディア・ペイドメディア)を活用してユーザーを獲得して、自社の顧客にする戦略になります。
実はそれほど新しい概念ではなく、古くから『クリック&モルタル』という呼称で存在していました。
ではなぜ、O2Oと名前を変えて、再び注目されているのでしょうか? その理由は、4つほど考えられます。
1、スマートフォンの普及
まず、スマートフォンの特性について考えてみましょう。スマートフォンは従来のケータイ(フィーチャーフォン・ガラケー)と比べて高い処理性能を持っています。
スマートフォンの普及と同時に、通信回線の速度も上昇していきました。詳しくはこちらをご覧ください。
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フィーチャーフォンと比較すると、インターネット上で活動する端末としては圧倒的に優れています。人や場合によってはパソコンよりも優れていると思う人もいるかもしれません。
また、GPSや加速度センサーなどの機能も搭載していますね。これらの機能が搭載されているフィーチャーフォンもありましたが、スマートフォンには劣るものでした。
つまり、オンライン上の活動をオフラインに、オフラインでの活動をオンライン上に、それぞれ提携させる下地がスマートフォンの普及によって出来上がったのです。
もうひとつ、スマートフォンにはプッシュ通知という優れた機能があります。たとえば、Twitterにリプライが飛んできたとき、それを知らせてくれますね。それがプッシュ通知です。
企業が知らせたい情報やクーポンを配信したときに、ユーザーが特別なアクションをすることなく、通知することができます。このプッシュ通知と、アプリによる情報配信を組み合わせると、より効果的に誘導を行うことができます。
2、ソーシャルメディア
スマートフォンとともに、急速に普及しているのがソーシャルメディアです。TwitterやFacebookなど、みなさん利用していることかと思います。そのソーシャルメディア上で、商品をレビューしたり、使用感を聞いたりする人もいるのではないでしょうか。
そこで評判が良ければ買うきっかけになり、悪ければ避けるようになるでしょう。
つまり、オンラインで得た評判をきっかけに、オフラインで購入し、再びオンラインでレビューするというサイクルが出来上がります。これをO2O2O(Online to Offline to Online)とも呼ぶことがあります。
このソーシャルメディア上の評判や、ユーザーとの関わりを作るきっかけとして、企業がソーシャルメディア上にアカウントを作って運営するというケースも増えています。今後は、ユーザーのソーシャルメディア上の活動だけではなく、企業の活動も重要となるでしょう。
3、ビッグデータの活用
ビッグデータはデータベースに蓄積した情報のことです。この連載でも解説しておりますので、ご参照ください。
就活で知っておきたいIT基礎知識@ビッグデータ:https://www.hivelocity.co.jp/blog/news/8359
たとえば、最初に例として挙げたマクドナルドの『トクするケータイ』では会員登録が必要です。この会員登録によって年齢・地域・性別などの情報を取得することができます。私であれば、『東京』に住んでいる『23歳』の『男性』という具合です。こうした情報を分析すると、会員が好む商品のクーポンを配信することが可能になります。
それだけではなく、クーポンの利用状況や一緒に購入した商品も情報に加えることができます。つまり、『東京』に住んでいる『23歳』の『男性』である『私』は『ダブルチーズバーガー』が好きであるという情報に進化するわけです。その好きな商品のクーポンを配布すれば、また店舗に足を運ぶことになるでしょう。
最初に統計データを活用して地域・世代に人気な情報やクーポンを配信し、来店したユーザーの情報から、個人向けにしていくことで来客の頻度の情報が見込むことができます。
これがビッグデータの活用です。
4、効果測定の手軽さ
従来のウェブマーケティングは、効果を測定するのが難しい作業だと言われていました。コンバージョン率(インターネット上のプロモーションで最終的に集客できた率)の測定は、ウェブについて詳しくない人には難しいことです。
しかし、インターネット上でクーポンを配布し、来店して使用されたクーポンの数を数えればコンバージョン率の測定が可能です。この手軽さもO2Oの利点です。
O2Oのまとめと注意点
O2Oというのは、オンラインでユーザーと良い接点を持ち、オフラインの店舗に訪れてもらう顧客を作るものです。信頼や好感というものが全ての鍵になります。
一方で、こんな問題もあります。みなさんは『ステマ』という言葉を聞いたことはありますか?
ステマというのはステルス・マーケティングの略で、店舗や業者の人間(強い影響力がある人間の場合もある)が、身分を隠して高い評価をつけるというものです。要するにやらせです。
これは何が問題かというと、今はソーシャルメディアなどによって情報は爆発的に広がっていきます。ソーシャルメディアは自分の知り合いによって繋がるので、ただ知るよりも流れてくる情報に影響力があります(これをバイラル効果と呼びます)。
ソーシャルメディアのバイラル効果によって消費者の誤解を生む可能性が高く、不正競争につながる恐れがあります。よって、現在、景品表示法による規制の検討が進められています。
企業として法を遵守するということは大切なことです。また、ステマを行っていると判明した企業は『ステマ企業』としてレッテルを貼られ、同じくソーシャルメディアによって広められていきます。顧客との信頼関係を築きたいのであれば、ステマを行うべきではありません。
O2Oの手法を用いて、顧客と良い関係を築いていきましょう。