インターネット上には利用が無料であるにも関わらず、収益をあげているサービスが多くあります。検索エンジンであるGoogleやYoutube、ソーシャルメディアのFacebook、Twitterと、枚挙にいとまがありません。みなさんが遊んでいるかもしれないソーシャルゲームも、多くは無料ですよね。
これらのサービスは無料なのに、なぜ収益が出ているのでしょうか?
今回はインターネットビジネスで切っても切れない関係となったフリーミアムについて解説します。
フリーミアム
フリーミアムとはフリー(無料)とプレミアム(特別)を組み合わせた造語で、ベンチャー・キャピタリストのフレッド・ウィルソン氏が2006年にブログで発表したものです。そのブログでは、サービスを無料で提供し、クチコミや検索マーケティングなどで多数の顧客を獲得し、その顧客に対して付加価値などをつけて有料で提供することと述べています。
その後、Wired誌の編集長クリス・アンダーソン氏が『Free<無料>からお金を生みだす新戦略』(Free: The Future of a Radical Price)を執筆し、話題となりました。今回のブログは、このクリス・アンダーソン氏のFreeを基調に解説していきたいと思います。
クリス・アンダーソン氏は著書のなかでフリーミアムで収益をあげるには4つの方法があると説いています。
1, 直接的内部互助補助
特定の商品を無料で提供することでユーザーを増やし、他の商品やサービスの購入を促すことです。
マクドナルドのポテト全サイズ100円を想像するとわかりやすいかと思います。マクドナルドはポテトを全サイズ100円で提供することで来客を増やし、他のメニューを買ってもらうことで収益を増やすことを目的としています。
それと同じで、無料のサービスを提供することでユーザーを増やし、他の有料サービスで収益をあげることが直接的内部互助補助です。
2, 三者間市場
テレビやラジオのようなモデルで、広告主から広告料をもらい、顧客に無料コンテンツを提供します。
顧客が広告をクリックしたり、実際に広告の商品を購入することで三者間の市場が成立するため、こう名付けられました。
FacebookやTwitterなど、多くのソーシャルメディアが三者間市場モデルを採用しています。利用する時間が長い媒体ほど、三者間市場モデルであることが多いです。
3, フリーミアム
多くの顧客が利用する無料版と、顧客の一部が有料で利用するプレミアム版を用意します。プレミアム版の利用料で無料版のコストと収益を賄います。直接的内部互助補助と少し似ていますね。
有名なサービスだとEvernoteやDropboxがあります。
このフリーミアムの有料版を使う顧客は全体の5%という法則があり、5%ルールと呼ばれています。時折課金率が10%を超えているサービスもあったりしますが、ユーザーの満足度やロイヤリティが非常に高いサービスで、モンスター級と呼んでもいいと思います。
4, 非貨幣市場
この非貨幣市場はWikipediaを想像するとわかりやすいと思います。みなさんご存知かと思いますが、Wikipediaは無料で使うことができる百科事典です。
Wikipediaの記事は無償のボランティアが書き、公開しています。ボランティアはWikipedia上で記事を公開することで注目や評判を得られます。ここに金銭的な価値はありませんね。
このように価値あるものを無償で作り上げるコミュニティのことを非貨幣市場と呼びます。オープンソースを開発するコミュニティも、非貨幣市場にあたります。
フリーミアムが成り立つワケ
無料で提供しているサービスは、開発段階から無料だったわけではありません。開発費や人件費、維持費など様々なコストが掛かっています。
それでもフリーミアムが成り立つ理由は、Webサービスはデジタルで、運用コスト(サーバー代など)が小額であるためです。
みなさんはムーアの法則というのをご存知でしょうか。ムーアの法則はインテルの共同創業者ゴードン・ムーア氏が提唱した法則で、半導体(CPUやHDD)の性能は指数関数的に向上するため、価格も徐々に安くなっていきます。
私が経験した例で言えば、128GBの外付けHDDを1万3千円ほど出して買ったのですが、今1万3千円出せば2TBのものが買えてしまいます。
こんな感じでデジタルの世界ではCPUやHDDといったものが刻一刻と進化していって、サービスを提供するコストが安くなっていきます。なので、無料ユーザーや有料ユーザーが増えてもそれほどコストが掛からないのです。
もうひとつ理由があります。それはネット上のサービスは無料であるということです。全く逆説的ですが、既存の無料サービスが存在する限り(それも規模が大きければ規模が大きいほど)、新規の有料サービスは参入しづらくなります。そのため、基本的な利用を無料にした上で収益モデルを作らなければなりません。
逆に、有料サービスしか無かった場合でも、他のサービスとの差別化を図る上でフリーミアムのモデルを使うということも考えられます。
ネット上のサービスが全て無料で使えるようになる……なんて未来もあるかもしれませんね(いずれGoogleがやりそうな気がします)。